【高齢者の自動車運転事故の原因〜足の動きから考える〜】
高齢者の自動車運転事故の原因は様々です。
では、どんな原因があるのか医学的に考えてみます。
結論からいうと、どんなに元気な高齢者でも、若い人から見れば年寄りで、若い人と同じような動きは出来ません。
脳の指令が脊髄や末梢の神経を伝わって、筋肉を動かして、アクセルやブレーキを踏む動作を支配しています。
脳や脊髄に異常があるのか、もしくは異常がなくても加齢的に機能しないのか。
脳や脊髄ではなく、末梢神経なのか。
その末端の筋肉なのか。
アクセルとブレーキをスムーズに動かすためには、脳、脊髄、末梢神経、筋肉と簡単に分けるだけで4つの機能がうまくいかないと作動しません。
脳が異常ある場合は、急激に発症する脳梗塞や脳出血などは分かりやすいですね。
パーキンソン病や認知症初期は本人も家族も全く気づきません。特にパーキンソン病は発症の数ヶ月は見逃されることが多いです。
また、もっと診断が難しいのは、脊髄の異常です。脳からの指令が筋肉に伝わる前の脊髄がトラブルを生じると思わぬことが起きます。
明らかな麻痺症状ではなく、スムーズな動きが損なわれる症状が最も気づかれません。
錐体路障害という、手足のスムーズな運動が悪くなる症状です。巧緻運動障害もこれに含まれます。
巧緻運動障害は、主に手指の細かい動きが出来ないという症状に使われますが、錐体路障害の一つですので、足の細かい動きが出来ない症状でも使われます。
また、脳や脊髄のどこかで異常があると、いつも制御される動きが、とっさの時に過剰に出てしまうことがあります。これが反射といわれる動きです。
ほんの少し筋肉や腱が伸ばされただけで、過剰に手足が動いて制御出来なくなる反射です。
これを伸長反射といいます。
他に、末梢神経の麻痺として、前脛骨筋麻痺で足首が伸ばせなくなる。
糖尿病や血流障害など内科疾患で足の感覚や動きが悪くなることもあります。
これらの症状は、若い人にも稀に来たしますが、ほとんど高齢者に生じます。
しかも、初期は誰も気づきませんし、高齢者の手足の動きが悪くなるのは、病気ではないというのが一般的な認識です。
明らかな異常所見がない限り、これは病気ではなく加齢現象の一つとみなされます。
この判定や区別は非常に難しいのですが、このように身体の動きの悪さが出てしまったら、病気か加齢かの問題ではなく、自動車を運転してはいけないということが答えです。
残念ながら、この微妙ですが大切な動きは、本人はもちろん家族も気づきません。
だからこそ、高齢者は自動車運転をしてはいけないのです。
元気な高齢者ほど、周りが無責任に自立させようとしますが、責任を持って高齢者を監視することも必要なのです。
高齢になればなるほど、自動車のような何かに頼る移動よりも、歩行という本来の自立的な移動の方が、自分の健康のためにも他人とを繋ぐ社会のためにも必要なことだと思います。
おだ整形外科クリニック院長
(株)ディディトリニティーラボ代表
小田 博
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